骨髄採取直前中止で緊急コーディネート ~財団発表内容の疑問点と不明部分~
1月16日、術前検診時データの確認不足のため、骨髄採取が中止となった事例について骨髄バンクの新聞発表がおこなわれました。財団の発表した内容は2~3ページに一部を抜粋して掲載してありますのご参照ください。1月17日に全国紙各紙で報道され、テレビのニュースでも伝えられました。原因はともあれ、患者さんの前処置実施前に中止され、患者さんに最悪の結果とならなかったことは幸いでした。
速いところでは翌17日には新聞発表の原稿が地区広報委員宛に送達され、ボランティア団体にも伝達されました。この発表内容について理解し難いところ、疑問を感じた点もありました。
(1)本事例について
①採取計画が事前に提出されなかったことが、原因の一番目にあげられていますが、なぜ、採取計画が事前に提出されれば、判断ミスが避けられるのかの説明がありません。
②財団基準値に性差が設定されているのは採取量についてか、ヘモグロビン(Hb)値に付いてか、明確でありません。
③ヘモグロビン値13g/㎗は管理上厳守すべき絶対値なのか、-αの許容値が設定されているのか明確でありません。
④経緯の説明の項で、日程の単位が採取予定日との関連で提示されていますが、採取予定日̶××日とだけ表示されています。××日前と表示した方が分かりやすいのではないでしょうか。
(2)緊急コーディネートの過去の事例に関して
①緊急コーディネートの過去の事例に関して7例が提示されており、その中、3件が未発表となっています。公表するか否かの判断基準は決められているのでしょうか。
②緊急コーディネートの今回を含めた8事例はすべて1999年10月以降に発生しています。それ以前の発生はなかったのでしょうか。8事例のうち4件が2003年度以降に集中していますが、その原因として何があるのでしょうか。
骨髄バンク事業はいつも述べていることですが、骨髄バンクだけでなく、国の機関である厚生労働省、地方自治体である都道府県、骨髄採取・移植を行う医療機関、登録ドナーのデータを管理する日本赤十字社、さい帯血バンク、ドナー募集に賛同し登録会を開催させていただく企業・日赤献血事業関係者、登録会の運営に参加するボランティアの人たち、普及広報の便宜を図ってくださる公共広告機構、そして何よりもドナー登録をして患者さんの必要に応じて提供してくださる善意のドナーさんたちによって支えられ、それぞれの役割分担の上に成り立つ、総合的社会システムなのです。
システムは大きくなればなるほど、システムの各部分が正確に稼動することが必要です。そのためには各システムの稼動を促す情報が「正確な内容で、必要なときに」伝達されなければなりません。
今回の緊急コーディネートにいたる事例の発生原因は組織稼動の情報が「不正確な内容で、必要なときに」伝えられなかったことが原因であると説明されています。新聞発表の内容にも上記のような不明確な部分があり、果たして再発が防止されるのか懸念されるところです。
誰がミスしたのかと犯人捜しをするのでなく、どうして正確な内容の情報が必要なときに必要な部分に伝達されなかったのか、その原因をはっきり把握して再発を防止しすることが必要です。
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◆2007年1月16日の財団発表資料
≪術前健診時データの確認不足のため採取中止となった事例≫
本年1月下旬に予定していた非血縁者骨髄移植に関して、昨年末、採取施設において骨髄提供者に対して実施した健康診断時の貧血検査の数値が、財団の基準値未満であったにも関わらずコーディネートが進行し、移植予定日の3週間前にその事実が判明し、骨髄採取が中止となった事例が発生いたしました。財団では、緊急コーディネートのガイドラインに則り、緊急コーディネートを開始しました。
本事例に関しまして、移植を希望されていた患者さん・ご家族の方に多大なる精神的負担を与えてしまい深く陳謝すると共に、骨髄提供予定者の方に対しましても、ご迷惑をお掛けしたことを深くお詫び申し上げます。
当財団では、同様事例が発生しないよう再発防止策を講じると共に、確認体制の再確認を実施しました。幸い、非血縁者間骨髄移植を希望された患者さんに対する最終的な処置(前処置)前であり、致命的な結果になることはありませんが、財団では、本年3月上旬に骨髄移植を実施できるよう調整を行っています。
<経緯>
ドナー:30歳代男性(財団基準値:Hb 13g/㎗未満不適格)
採取予定日-35日術前健診実施Hb 12.9g/㎗であった。
採取予定日-22日採取施設より、財団地区事務局に骨髄採取量について問い合わせがある。骨髄採取量について患者さんの標準採取量が990㎖、術前健診の結果がHb12.9でドナーの上限量が945㎖、移植施設と相談し骨髄採取量を945㎖に変更するとのこと。事務局承諾する。(性差の確認せず。)
採取予定日-21日採取施設にて、自己血採取実施400㎖を採血した。(鉄剤処方なし)自己血採血後、採取施設より採取計画書受理。Hb値が、男性の基準値以下であることが判明。再検査を実施することとした。
採取予定日-14日再検査Hb 12.5g/㎗のため採取中止とした。
<原因>
○採取計画書が、自己血採血前に提出されなかったこと。
○採取施設より事務局に採取量の確認が入った際に、性別の確認を行わなかったこと。
○採取施設において、財団基準値に性差があることを見逃した。
<再発防止策>
当財団では、今回のような事例が再発することを防止するため、次のような対策を実施します。また、全国の認定施設に対して、「緊急安全情報」を発信し、注意喚起と再発防止のお願いを致しました。
①術前健診と同日に自己血採血を実施することは原則禁止とすること。
※但し、日程や地域性からやむを得ず当日採血する場合は、必ず採血前に血算値・生化学検査データを確認すること。
②骨髄採取計画書を提出しない限り自己血採血は実施しないこと。
※但し、日程・地域性からやむを得ず当日採血を実施した場合は、終了後速やかに提出すること。
③骨髄採取計画書の提出期限は、採取予定日の3週間前もしくは1回目の自己血採血前までのどちらか早い方とする。
また、財団と致しましては、再発防止の観点から、職員に対する再教育を実施するとともに、確認体制の再確認を実施しました。
■これまでに未発表だった過去の緊急コーディネート事例3例
(注:これまでに7例の緊急コーディネートが実施されていますが、先の4例は報告されています。5例目以降、以下の未発表3例が今回明らかにされました。)
●未発表事例① 術前健診時データを見落とし、自己血採血を実施した事例(2003年8月)
理由:採取施設において術前健診時のデータを誤認識したため。
経緯:術前健診時の段階で、Hb値が財団基準以下であったにも関わらず、Hb値を誤認識し自己血採血を実施した。財団として、各地区事務局に対する周知内容が守られていない状況であった。
この患者さんに時間的ロスを与えたことを謝罪し、通常のコーディネートより時間短縮を目指した「緊急コーディネート」を実施することとした。
内容:優先的作業、通信手段の変更、採取施設への日程調整特別依頼など。
●未発表事例② 術前健診の判定結果が遅れた事例(2003年10月)
理由:採取施設において術前健診時の検査値に異常があった事実を報告しなかったため。
経緯:術前健診時に尿酸検査を実施し、異常値であった事実を採取施設が財団に報告せず、コーディネートが進行した。採取施設に対して、財団として、確認および督促が十分とはいえない状況であった。この患者さんに時間的ロスを与えたことを謝罪し、通常のコーディネートより時間短縮を目指した「緊急コーディネート」を実施することとした。
内容:優先的作業、通信手段の変更、採取施設への日程調整特別依頼など。
●未発表事例③ 術前健診時の判定結果報告が遅れた事例(2005年1月)
理由:採取施設において、術前健診時に再検査項目があるにも関わらず採取決定としたため。
経緯:術前健診の結果、再検査項目があるにも関わらず「採取決定」とコーディネートが進行した。
財団では、代表協力医師に対する相談が遅れた。
財団として、各地区事務局に対する指導不足の状況であった。この患者さんに時間的ロスを与えたことを謝罪し、通常のコーディネートより時間短縮を目指した「緊急コーディネート」を実施することとした。
内容:優先的作業、通信手段の変更、採取施設への日程調整特別依頼など。


