●全国大会でのクイズの誤謬
2月の財団主催の全国大会では、第2ブではクイズ形式で出席者全員に「○」と「×」のカードを持たせて答えさせる内容がありました。その中のひとつにこういう問題がありました。
「公務員にはドナー休暇制度がある」○か×か、というわけです。私は×のカードを揚げました。しかし、正解は○であるとして「公務員にはドナー休暇が認められている」と財団職員の解説がありました。もしかしたら、その後は制度が変わっているかも知れませんが、そのような変更は聞いていませんので、おそらく今でも「公務員すべてにドナー休暇が認められているわけではない」とするのが正解でしょう。もう少し詳しくいえば「国家公務員には人事院規則で1993年4月からドナー休暇が認められているが、地方公務員は自治体によってその制度がないところもたくさんある」のです。
●ドナー休暇制度の発端
当初、骨髄バンクで骨髄提供するドナーは、サラリーマンの場合は大切な有休休暇を取り崩してコーディネートや骨髄採取のために時間を割いていました。こうした実情に対して、ボランティア団体は有給のドナー休暇制度を整備するように求めていました。これを受けて、財団発足から1年後の1992年11月、厚生省(当時)は骨髄バンクのドナーに特別休暇を適用してほしい旨の依頼文書を、人事院(対象は国家公務員)、都道府県(対象は地方公務員)、経済4団体(対象は民間企業職員)に送りました。これについては、人悶着がありました。自治省(当時)が国家公務員に認められていないのに地方公務員に認めるには問題があると「待った」をかけたのです。しかし、地方での事態はすでに動き出していました。札幌市や福島市、取手市、足立区といった自治体で実質的な休暇制度を導入していったのです。こうした運動の背景には労働組合にも働きかけていました。私は地方公務員労組の全国組織である自治労に申し入れたところ、ドナー休暇制度導入を訴える論文をまとめるのがいいということになり、「月刊・自治研」(1992年9月号)に「善意の骨髄提供者に特別休暇を」を書いて掲載されました。
●地方公務員の職免と特別休暇
地方公務員にドナー休暇を付与するには、条例で制度として定めるほか、首長の判断で変更できる職員の就業規則で「職務専念義務免除」としたり「特別休暇」とするなどの方法があります。とはいえ、すべての市町村にこうした制度が整備されているわけではありません。地方公務員の処遇は各自治体の自主性によって異なります。多くの地方自治体でドナー休暇制度のないままになっているところもあると思われます。一方、ごくわずかではありますが、民間企業でもドナー休暇を認めている会社もあります。そうした企業の場合は、多くは職員の中から患者が出て、初めて問題意識を持って休暇制度を作った、という会社がほとんどのようです。やはり、骨髄バンクと骨髄移植に対する国民の理解をもっと求めていく必要があると思います。
●そんなの関係ない人たち
やはりサラリーマンが有給休暇をつぶして、骨髄バンクのドナーになるのは大きな問題です。骨髄バンクが社会に機能するシステムであるためにはドナー休暇制度は大切でしょう。でも、これはサラリーマンのための制度です。もし、お寿司屋さんの職人だったり、またタクシー運転手さんだったら、ドナー休暇制度なんて関係ありません。休んだらその分収入が減るのです。休んだら生活が成り立たない人たちもいます。でも、自営業も含めたそういう人たちでも、ドナーになりたいと思っている人たちは存在します。そういう方たちのためにはドナー休暇制度では役に立たないのです。そんな人はドナーになるな、と捨象してもいいのでしょうか。
●休業補償を考えよう
初期の骨髄バンクでドナーになる人たちは、自腹を切ってでも提供するという状況にありました。そうしたボランティア精神に依存して骨髄バンクは始まったといってもいいでしょう。最初はそれで良かったかも知れません。しかし、すでに財団発足から17年も経つというのに、真剣にその辺は検討されていないのです。もちろん、提供する骨髄は無償です。しかし、提供するために仕事を休む場合、ドナー休暇制度がないドナーには休業補償制度があってもしかるべきだと思うのです。現在、官庁の会議や議会、裁判所などに証人や参考人として出向き、時間を拘束される場合には「日当」や「謝金」が支払われます。でも、骨髄バンクのドナーには仕事を休んでも何ら補填はありません。これって、真剣に検討する必要があるはずです。そういう時期に来ていると思います。 (野村正満)